2019年度 入学式 校長告辞(新入生へのメッセージ)

2019.04.10 2019.04.11

熊本高等専門学校の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。
また、専攻科へ進まれる皆さん、進学おめでとうございます。

ご家族の皆様をはじめ関係者の皆様も本日は、誠におめでとうございます。

本日、多数のご来賓の方々にもご列席頂きまして、ここに平成最後となります平成三十一年度の入学式を挙行できますことは、校長として喜びに耐えません。

あと三週間あまりで平成から「令和」という新しい時代になる節目の時に熊本高専に入学、あるいは専攻科に進学する皆さんには、今後折に触れて思い出される記念の日となるのではないでしょうか。

熊本高等専門学校には、ご承知のように熊本キャンパスと八代キャンパスの二つのキャンパスがあります。

熊本キャンパスは、何と戦中の昭和十八年(一九四三年)に財団法人熊本無線電信講習所として設立され、戦後の昭和二十四年(一九四九年)に熊本電波高等学校と改称され、昭和四十六年(一九七一年)に熊本電波工業高等専門学校となりました。

一方、八代キャンパスは、昭和四十九年(一九七四年)に八代工業高等専門学校として設置されました。

平成十六年(二〇〇四年)に法人化という大改革が行われ、独立行政法人国立高等専門学校機構が発足して、当時全国に 五十五校ありました国立高専が一括してその傘下に加わりました。

その後、平成二十一年(二〇〇九年)十月には、熊本を含む全国四地区で高専の高度化再編が行われ、それら四県に二つずつあった高専がそれぞれ一つに統合されまして、熊本では、独立行政法人国立高等専門学校機構熊本高等専門学校となりました。翌、平成二十二年(二〇一〇年)の四月から新たな熊本高等専門学校の一期生が入学しました。それから十年目の本日、入学式を迎えた皆さんは、熊本高等専門学校の第十期生ということになります。

高専は、実践的かつ専門的な知識及び技術を有する創造的な人材を育成するとともに、我が国の高等教育の水準の向上と均衡ある発展を図ることを目的としており、高専出身者は、これまで我が国の成長を支え牽引するのに大きく貢献して、産業界はじめ学術の分野でも高い評価をうけております。

近年では、国際的な評価も高まり、モンゴル、タイ、ベトナム、インドネシアなどで日本式の高専を設置する国も出てきております。例えば、モンゴルでは既に日本式の高専ができておりまして、第一期生が、この六月に卒業する予定です。また、タイでも高専コースというのがテクニカルカレッジの中に既にできておりますが、それと並行して日本の高専と同等の教育を実施するタイの高専が、この五月に開校する予定です。

皆さんは、このように高い評価をうけている日本の高専のなかの熊本高等専門学校に入学して、本科では五年間、さらに専攻科まで進学すれば七年間という長い期間一貫した専門教育をうけることになります。各学科四十名という少人数クラスで、教育熱心な先生方が丁寧に指導してくださいます。

専門教育のみならず、国際性や人間性の涵養にも力を入れています。熊本高専は、我が国の高専の中でいち早く国際交流に取り組み、現在でも活発に交流を続けております。海外研修、留学生の派遣と受入れ、国際ワークショップの企画・運営など様々な活動を展開しており、単に熊本高専の学生のみならず全国の高専からの参加も受入れております。

高専ロボコン、プログラミングコンテスト、デザインコンペティションなどの全国的な大会、ハッカソンやアイデアソンなどと呼ばれるワークショップやプロジェクト形式で開催される国内外のイベント、クラブ活動や高専体育大会、そして、オープンキャンパス、学園祭(高専祭、電波祭)、クラスマッチをはじめとする数々の学校行事などの多彩な活動を経験して、コミュニケーションやリーダシップ、マネジメントなどの人間力を高めています。

このような専門性のみならず、人間力や国際性も身に付けている点が、産業界で、また、大学などの学術研究の世界で、高専出身者が高い評価を受けている要因であると思います。

禅宗の夢窓国師という偉いお坊さんの言葉に、
「本分の工夫をなす人、万事の中か工夫の中かと へだつべきことなし」
というのがあります。

「工夫」というのは、禅宗の修行に精進することだそうですが、座禅や難しい問答などを通して修行することと、食事をしたり掃除をしたり野菜をつくったりという日常の生活とで区別はないということです。

禅宗の偉いお坊さんでなくても、同じようなことは、例えば、渡辺貞夫さんというジャズ・ミュージシャンが、「メシ食ってる時も風呂入っている時もジャズだ」と言っていたということを、同じくジャズ・ミュージシャンの山下洋輔さんが書いていたのを読んだことがあります。

エンジニアや研究者になって世の中に貢献するという目標に関しては、専門分野の知識や技量を習得することと、それら以外のいろいろな活動とで、区別はないと思って、多様な高専生活を送って頂き、それを楽しんで頂きたいと願っております。

その幅の広さが、これからの変化が激しい世の中に柔軟に適応しながら、しなやかに、かつ、たくましく生き抜く力へと繋がる筈です。

熊本の豊かな自然と歴史・文化のなかで、教育熱心な教員による手厚く丁寧な指導の下に皆さんがしっかりと育つ環境が、熊本高専では整っています。充実した熊本高専生活を送って大きく成長して下さい。

本日は、熊本高専への入学、誠におめでとうございます。

平成三十一年四月五日
熊本高等専門学校長
荒木 啓二郎